これは『Lost in the Shell』(Routledge Books、2025年)からの抜粋です。
主題
- 人工知能(AI)が社会に広く浸透する今、「技術としてのAI」と「人間の主体性・アイデンティティ」との関係を改めて問い直すべきだ、という立場をとる。
- この本 特に、AI を人間と同等の「人」とみなすことへの無条件の拒否は、必ずしも「人間=神秘的存在」や「宗教的観点」からではなく、むしろ技術の性質と人間の主体性の構造的差異からきている、と論じられている。
なぜAIを人間と同列に見なせないのか
- この本は、AI を「法的人格(legal fiction)」として扱うことにも懐疑的だ。すなわち、たとえAIが高度化・自律化しても、それを人間と同列に「人格」として認める前提には反対、という立場だ。
- これは「人間とは何か」「主体性とは何か」という根本論に立ち返る議論であり、単なる技術的・機能的な能力の有無で決まるものではない、という主張だ。
技術の普及と「主体性・アイデンティティ」の危機
- AI の普及は、私たちの生活や意思決定、コミュニケーション、仕事、認識のあり方などに深く関わるようになる。これにより、「人間らしさ」や「主体的決定を下す人間の尊厳」という価値が揺らぐ可能性がある。
- この本は、こうした変化に対して慎重であるべきだと訴える。技術の便益を享受しつつ、人間に固有の主体性や倫理的責任、アイデンティティをどう守るかを真剣に考える必要がある、という見解だ。
規制・法制度における限界と問い直すべき価値
- だがこのような法制度だけでは、「技術」対「主体性・人間性」という問題の根底には届かない。この本は、制度や規制ではなく、社会や個人の価値観、倫理観を含めたより根本的な再考が不可欠だと指摘する。
