デンマークの「顔と声の著作権」提案とその問題

デンマーク政府は2025年、人の顔や声などの生体データに著作権を与えるという法律を提案しました。

目的は、ディープフェイクの悪用を防ぎ、個人に外見や声のコントロール権を与えることです。

しかし、この提案には大きな問題があります。

  1. 法的に無理がある
    • 著作権は創作物にしか適用できません。
    • 顔や声などのデータは「発見されたもの」であって「創作物」ではないため、著作権で保護するのは不適切です。
  2. すでに個人データ保護法がある
    • 個人の顔や声の利用は、欧州の個人データ保護法や肖像権ですでに規制可能です。
    • 新たな著作権は重複し、混乱を招きます。
  3. 個人のデータが「商品化」される危険
    • 著作権を持つと、データをライセンスとして売ることが可能になります。
    • 一度売ると取り戻せず、研究や産業での自由な利用が妨げられます。
    • 結果として、科学研究やAI開発のコストが急増し、停滞を招く恐れがあります。
  4. 過去の事例
    • 人のゲノム情報や細胞・組織に著作権や所有権を与えようとした試みがありました。
    • しかし、結局は「データは発見物であり、個人が直接的に商業権を持つのは難しい」という結論に至っています。
    • その一方で、過剰な商業利用は倫理問題を引き起こし続けています(例:ヘンリエッタ・ラックスのHeLa細胞)。
  5. 提案の代替案
    • 個人ごとの著作権ではなく、データ利用による利益を社会全体で分配する仕組みが望ましい。
    • 例えば、生体データの利用で得た利益の一部を、研究・医療・公共データ基盤の整備に回す仕組みです。

まとめ

  • 顔や声への著作権付与は、法的に無理があり、個人のデータを商品化してしまう危険がある。
  • 研究や社会全体の利益を守るには、データ利用益を集団的に還元する仕組みの方が合理的です。

A longer version in English is here.