2025年6月、デンマーク政府は、人の顔や声(バイオメトリックデータ)に著作権を与えるという法案を出しました。これは、ディープフェイク(偽の映像や音声)から国民を守るのが目的です。
なぜこの提案は問題か?
1. 著作権は創作物にしか適用できない
顔や声などの身体的特徴は「発見されたもの」であり、「創作されたもの」ではないので、法律上は著作権の対象になりません。
2. 既に他の法律で保護されている
EUのデータ保護法や各国の肖像権などが、すでに個人データの悪用を防ぐために存在しています。新たに著作権を使う必要はありません。
3. データの「商品化」が進む
著作権が付くと、データは**売買できる「資産」**になります。一度売れば取り戻せなくなり、個人のコントロールを失う危険があります。
歴史的な前例:人間の情報に所有権はない
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**ゲノム(DNA)**にも、過去に著作権や特許を与えようという動きがありましたが、最高裁は「発見であって創作ではない」として却下しました。
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細胞や体液なども、研究に使われるとその人の所有物ではなくなり、研究者の所有物とされるという裁判例もあります(例:Moore事件)。
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HeLa細胞の事例では、被験者の遺族が企業を訴えるなど、利用と利益の不公平が問題になりました。
科学・AI研究への悪影響
このデンマーク案が成立すれば、研究者が誰かのデータを使うたびに使用料や契約が必要となり、コストや法的リスクが増大。研究の自由が失われる可能性があります。
AI研究や神経科学にとって、自由なデータアクセスは不可欠であり、制限は大きな打撃です。
解決策:個人ではなく「社会全体」で利益を共有
提案されている代替案は、以下の通りです:
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データ利用で得た利益の一部を公共基金にまわす
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その資金を研究や医療、公共インフラに使う
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個人も社会も両方が利益を得るしくみにする
結論
人の顔や声に著作権を与えるのは、法的にも倫理的にも正しくない。
本当に大切なのは、「その人の顔がいくらか?」ではなく、データの総合的な価値をどう社会全体に還元するかを考えることです。
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