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- Nature Electronics に出た論文は、抵抗変化メモリ(RRAM) を使った回路で、ある種類の計算なら デジタルプロセッサに近い精度 を目指せる、と述べている。もし本当なら、AI向けハードウェア の速度と省エネに大きな利点が出る可能性がある。
ただし、いまの結果は理論や小規模の実証が中心で、より大きいシステムでの検証が必要 とされている。
- Nature Electronics に出た論文は、抵抗変化メモリ(RRAM) を使った回路で、ある種類の計算なら デジタルプロセッサに近い精度 を目指せる、と述べている。もし本当なら、AI向けハードウェア の速度と省エネに大きな利点が出る可能性がある。
- 研究は、北京大学 と 清華大学 の研究者が協力して行った。テーマは、行列(マトリクス)の計算を、アナログ方式で高い精度で実行できるかどうか、という点である。
- アナログ計算 では、0と1のデジタルではなく、電圧・電流・電荷・抵抗 などの物理量で数を表す。
強みは、分野によっては 速い・電力が少ない こと。弱みは、一般に 精度が下がりやすい ことで、これまでAIのように精度が重要な用途では使いにくかった。 - 著者の一人 Zhong Sun(北京大学) は、以前(2016〜2020年)に ミラノ工科大学 で博士研究員として研究していた。博士課程ではRRAM素子の物理動作を研究し、その後はRRAMを使った インメモリ計算(メモリ内で計算する方式)に取り組んだという。
- 研究チームは、行列を使う線形代数の計算を、アナログで 信頼性高く 解くための回路アーキテクチャを提案した。
計算を物理システムに「組み込み」、あるアルゴリズムで繰り返し計算して、従来より 精度を大きく上げる ことを狙っている。研究者は、簡略化した条件ではあるが デジタル並みの精度が可能 だと主張している。 - 性能比較(ベンチマーク)は、現時点では 仮定にもとづく推定 が中心で、より大規模な集積アレイでの 実験的検証はこれから である。
彼らは、アナログ計算の段階では 遅延(レイテンシ)がほぼ一定 になり得る、という考えから、小さな行列で測った時間をもとに 128×128 の行列方程式へ外挿した。その結果、用途によっては、処理量や電力効率が デジタルより2〜3桁(100〜1000倍) 改善し得ると見積もっている。 - 試作は、RRAMチップを プリント基板(PCB) に載せ、周辺回路はチップ外に置く構成である。
この試作で、16×16 の行列方程式をハードウェアで解き、24ビット固定小数点(32ビット浮動小数点に相当 と説明)での精度を示したという。 - RRAMは非常に薄い層で作れ、クロスバー配列 により高密度化できるため、将来は小型化しやすい可能性がある。ただし、実際の最終サイズは、システムとして統合してから判断する必要がある。
- 製品化については、研究者は前向きで、次の段階として、RRAM配列に加えて 増幅器、DAC(デジタル→アナログ変換)、ADC(アナログ→デジタル変換) などを 同一チップ上に統合 し、低消費電力の独立プロセッサを目指すとしている。
- このチップは汎用CPUの代わりではなく、行列計算が中心となる分野で働く アクセラレータ(補助プロセッサ) を想定している。対象として、AI、科学計算(スーパーコンピューティング)、気象予測、信号処理、6G通信 などが挙げられている。
- プログラミング面では、高水準言語を全面的に変える必要は小さいが、専用コンパイラ と ISA(命令セット)へのインターフェース は必要になる、という見通しが示されている。
- 量子計算との関係については、この方式は CMOS互換の通常の電子回路 を使える点が強調されている。つまり、量子計算のような特殊技術に依存せず、RRAMを製造できる工場と既存プロセスを活用しやすい可能性がある。また、量子計算が狙う問題の範囲と、AIで重要な行列計算の範囲は部分的に異なる、と説明している。
- 公衆に伝えるべき点として、研究者は、これまで精度の低さで評価されにくかった アナログ計算を再検討する価値 がある、と述べている。精度の壁を越えられるなら、現代の応用での役割を見直すべきだ、という主張で締めくくられている。
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